エネルギー設備について考える(1)~太陽光パネルについて~
太陽光発電システム(太陽光パネル)とは?
私達にとって電気は、今までは家の近くにある電柱を通じて電気を購入し使用するというのが一般的でした。
一般的すぎて、幼少期から大人になってからでも、コンセントに電化製品のプラグを刺して使用する際に、「中電から電気を買っているなぁ」なんて個人的には思った事すらありませんでした。

それがここ最近で、エネルギー価格高騰から太陽光発電システムがより普及し、 蓄電池や電気自動車などに、今まではできなかった「住宅に電気をためておく」事が 可能になったことで、電気とは「買う」か「つくる・ためる」の2パターンになり、 今では電気を買うという意識がいろんな方に芽生えてきたことを感じます。
最近では、新築住宅を建てる際に活用できる国の補助金の条件として、 太陽光発電を搭載していることがマストになってきており、 新築を建てる時は屋根の上には太陽光発電システムを搭載していることがだいぶ当たり前になりつつあります。

私たちイトー工務店としても、まだ買う電気のkW単価が安かった少し前の頃は、 太陽光発電システムは機器類が高額で導入コストが高かったこともあり、お客様へおススメしておりませんでした。
ただ、ここにきて電気代の高騰に合せて、太陽光発電や蓄電池等の機器類の普及によって購入しやすい価格設定になってきましたので、シミュレーションを行った結果、 コストパフォーマンスが出せる事がわかり、 太陽光や蓄電池を少し前からご提案させていただくようにしています。
このシリーズでは、この太陽光や蓄電池の仕組みから、比較検討する場合の重要な注意点など、検討するにあたってのポイントをお伝えしたいと思います。
※長文コラムとなっていますので、もし読み飛ばしながらポイントだけ抑えられるというかたは、下線文章と赤字をたどってください。
太陽光パネルの今と昔
太陽光発電システムはもう多くの方が既にご存知の事と思いますが、屋根等に太陽光パネル(ソーラーパネル)を載せて発電をし、パワーコンディショナ―(通称パワコン)という箱の中で、発電した直流の電気を家庭用電気の交流へと変換をし、家の中で生活用の電気として使用、そして使いきれず余った電気は電線を通じて売電し収入を得るという仕組みです。
画像でまとめると、太陽光パネルでの発電はこんな流れになります。




という流れになります。
この仕組みは昔から変わらないのですが、今と昔でだいぶ考え方の差があり、昔の考えのまま止まっている方のご意見も聞く事がありますので、今と昔の太陽光の考え方の違いについてまず考えていきましょう。
太陽光発電は売電に価値があったよね?
収益化できないならやる意味ない!はもう昔の話
一時期は、太陽光パネルで発電した電気のkWあたりの売電単価も高く、年間通じてかなりの額で売電収入が得られていたということもあって、たくさん太陽光パネルを積んで、たくさん電気を発電し、たくさん売電するというのが太陽光パネルを搭載する目的でした。
ですから、以前は少し屋根に載せたくらいでは意味がない、沢山載せなければ!
売電を頼りに収益化できなければやる意味がない。
なんて言われていました。
そう言っている方は今でもいます。

そういう方々は、売電して収益化できなければ意味がないと思っており、売電単価が安いから太陽光発電なんてもうオワコンだ。載せても全然儲からないから載せる意味がない。
と色々なところで言っていますが、その考え方自体が今の時代に合っていない為、今は頭を切り替えていただかなければいけません。
エネルギー価格高騰により状況が変わった!
なぜなら、昨今のエネルギー価格が上昇したことにより状況が変わったからです。
そもそもの上昇の理由としては、一時期までは、そんなに気にしてこなかった電力の使用量に掛けられる再エネ賦課金と燃料費等調整単価が値上がり、家で使った電気代が過去と似たような量にもかかわらず、「電気代高すぎてホント嫌になる!!」となってしまったのです。
ちなみに、今中部電力で電気を購入すると(2025年現在)
【従量電灯プラン(1kWhの電気料金)】
区分 | 電力量料金 | 再エネ賦課金 | 燃料費調整 | 合計 |
---|---|---|---|---|
第1段階(~120kWh) | 21.20 | +3.98 | −0.49 | 24.69 円/kWh |
第2段階(120~300kWh) | 25.67 | +3.98 | −0.49 | 29.16 円/kWh |
第3段階(300kWh超) | 28.62 | +3.98 | −0.49 | 32.11 円/kWh |
【スマートライフプラン(1kWhの電気料金)】
時間帯 | 電力量料金 | 再エネ賦課金 | 燃料費調整 | 合計 |
---|---|---|---|---|
デイタイム | 38.80 | +3.98 | −0.49 | 42.29 円/kWh |
@ホームタイム | 28.61 | +3.98 | −0.49 | 32.10 円/kWh |
ナイトタイム | 16.52 | +3.98 | −0.49 | 20.01 円/kWh |
一番安いオール電化の深夜電力のナイトタイムでも20.01円/kWhです。
太陽光パネルで発電をすると、2025年9月以降の新しい売電制度の平均金額が14.58円/kWですから、
買う電気よりも、売る電気の方が安いという現象が起こっているというわけです。

このエネルギー価格高騰から、今重要なことは、どうにかして太陽光発電で発電した電気を無駄なく自家消費にまわしたい!
売電目的ではなく、自給自足、自家消費が目的になった!ということになります。
これが今のエネルギー価格高騰の社会で生活する太陽光発電との付き合い方の大前提です。
太陽光パネルはたくさん載せた方がいい?
先に結論ですが、今は売電をあまり意識しなくてよいので、沢山の太陽光パネルを載せる必要はありません。

載せる量の目安としては、ご家族の電気の使い方にもよるのですが、色んな方のシミュレーションをしていると、一般的な4人家族が普通に電気を使って生活されて、蓄電池を考えていないなら3kW~4.5kWくらいで十分です。(一昔前は10kWは載せよう!というのが流行った時期もありました。売電の為に。)
あくまで、自家発電自家消費というのが載せる目的ですから余分に無理して載せる必要はありません。
ここで数値的な根拠も示しておきます。
一般家庭の4人家族の1年間の使用電力量
オール電化住宅:年6,600kWh
ガス併用住宅:年5,200kWh
(出典:中部電力ミライズ運営エネガエルより)
過去の太陽光発電の蓄積してきたシミュレーションデータや実データから、
- 冬期(12月~2月)が年間電力使用量の40%を占める(夏期7~9月:約25%、その他3~6・10~11月:35%)
- 月々の電力量の約1/3が昼に使用、約2/3が夜に使用。
- おおよそ屋根に載せる太陽光パネルの1kWあたり年間約1,200kWh発電する。
冬期の月々の昼間の電力使用量を算出
【オール電化住宅】
6,600kWh×40%=2,640kWh
(12月~2月の使用電力量)
2,640kWh÷3月=880kWh
(冬期1月あたりの使用電力量)
880kWh÷3=293kWh
(冬期1月あたりの昼間の使用電力量)
【ガス併用住宅】
5,200kWh×40%=2,080kWh
(12月~2月の使用電力量)
2,080kWh÷3月=693kWh
(冬期1月あたりの使用電力量)
693kWh÷3=231kWh
(冬期1月あたりの昼間の使用電力量)
この結果を踏まえて考えると、昼間に使用する電力を、もっとも電力消費が多い冬に合せ使用量の上振れ分まで考慮すると、オール電化住宅なら1日約350kWh以上、ガス併用住宅なら250kWh以上の発電が自家発電としてのぞましい事がわかる。
では、その目標自家消費電力量にふさわしい太陽光パネル搭載kWを考えていこうと思います。
搭載kW数の年間発電量から1月平均を算出
【3kWの場合】
3kW×1,200kWh=3,600kWh/年
(1年間の発電量)
3,600kWh÷12=300kWh/月
(1月の平均発電量)
【4kWの場合】
4kW×1,200kWh=4,800kWh/年
(1年間の発電量)
4,800kWh÷12=400kWh/月
(1月の平均発電量)
このような結果になります。
この発電量の結果から、冬期の太陽の出ている時間帯が短く発電量も平均を下回る可能性も考慮するならば、オール電化住宅だと4kW~4.5kWh程度、ガス併用住宅なら3kW~3.5kW程度載せれば日中の使用量は太陽光パネルで自家消費ができるという計算結果になります。
ここに蓄電池をつけられる方はプラス2kW~3kWを蓄電池への充電分プラスで載せてもらっても良いと思います。(シミュレーションをご希望される方はイトー工務店へお声掛けください)
いかがでしょうか?
こうやって考えると、昔は10kW以上載せたい!なるべく沢山載せたい!沢山発電して沢山売る!という考え方でしたが、今は、そんなに載せず生活で使うだけ発電するだけで十分という事がお判りいただけたのではないでしょうか?
太陽光パネルのメーカーはどう選ぶ?
では、より具体的に使用する太陽光パネルのメーカー選びについてです。
実際に昔は、パネル1枚あたりの発電量の差で比較して優劣をつけていた時代もありました。
「〇〇っていうメーカーは1枚のパネルでたくさん発電して、△△はあまりだよね。」という感じです。
以前なら発電量の数字比較はありましたが、実は現在そこまでの差はありません。
では何を気にして太陽光パネルメーカーを選べばよいのでしょうか?

今、パネルメーカー選びで重要なのは、発電する量で比較をするのではなく、
- 使用するパワコンの種類・仕様
- メーカー保証と設置工事保証の内容
の2点に注意して太陽光パネルメーカーを選ぶことが大切です。
①パワコンの仕様で選ぶ
前述したとおり、パワコンとは太陽光パネルで発電した電気を家庭用に使えるように変換するための変換機です。

今からの時代は、太陽光パネルをつける際、単に太陽光パネルで発電した電気を家庭用に変換するだけの機能にとどまるようではいけません。
蓄電池の設置や電気自動車の購入など、これからのご自分の家庭の電気をどうやって発電し、どう活用していくのか?また、今後、将来蓄電していくこともあるのか?電気自動車としての移動手段として使うのか?そんな風に少し先の未来の話かもしれませんが、後々のライフスタイル・ライフサイクルの可能性に電気を利用することが少しでも含まれているのならば、多機能なパワコンを選んでください。

一般的なパワコンだと、太陽光パネルで発電した電気を家庭用電気へ変換する機能しかないものが多いです。
しかし、これだけ電気代が高騰してくると、いずれ蓄電池をつけたり、電気自動車に太陽光パネルで発電した電気を蓄えて、夜や雨天時にその電気を家に戻したりという事があるかもしれません。
そんな時に、パワコンが重要です。パワコンが蓄電池に対応しているか?電気自動車にした際、電気自動車から家の方へ停電時に電気を送れるか?
などは太陽光パネルを載せる際に検討しておかなければ、いざ蓄電池や電気自動車を購入する際に、太陽光パネルのパワコン以外に、もう一つパワコンを増設しなければならなくなるかにしれず、余計な費用がかさむという可能性が見えます。
ですので太陽光パネルのメーカー選びは、将来を見据えて蓄電池や電気自動車を増設しても余計な費用がかからないようなパワコンを基準にして、そのパワコンの種類が用意されているメーカー選びをしましょう!
今ではいろんな器具に対応しているパワコンが各メーカーで出ていますので、太陽光パネルを購入する業者さんに確認してみましょう。
②保証内容で選ぶ
太陽光パネルの販売業者さんの言う「保証がついています」に安心せず、どこまで保証してくれるのか、内容まできちんと確認することも重要です。
まず、パネル自体に不具合があった際のメーカーの保証体制ですが、日本製の戸建て屋根向けに生産された太陽光パネルにはあまり見られませんが、海外製のパネルや産業用パネルという名目で売られているパネルは、不具合があった際に代替パネルをメーカーが送ってきてそこまでを保証とし、取替え工事(作業費)については保証しないというものがあります。
びっくりです。
いくら保証がついているとはいえ、パネルの費用しか保証してくれないとなれば取替え工事は実費で出さなければなりませんから要注意です。
じゃぁ海外製を買わなければいいよね?ほとんどが国産パネルなんでしょ?と思われがちですが、2024年の販売・設置実績を見ると、日本で売られている太陽光パネルの中でも海外製のパネルが58%と半分より多いシェアを確保しています。

太陽光パネルを購入される際にはメーカー保証の範囲に取替え工事費用が含まれているのかどうかも気を付けるようにしましょう。
また、太陽光設置の訪問販売業者が掲げる設置時の自社保証というものを押し出してきた場合、その保証は絶対に要注意です。
販売業者が訪問販売業者ならば業者の自社保証ではなく、第三者保証期間に保証してもらう事を強くおすすめしますし、本当は訪問販売業者のような地に足がついていない、どこかに撤退できてしまう業者さんよりも、地元業者さんに依頼しましょう。
なぜなら、設置については建物の屋根に穴を開けるわけですから、本当に信頼のおける設置業者を選ばなければなりません。

ちなみに、太陽光パネルの取付方法ですが、板金の屋根の場合は太陽光パネルを取付ける方法が2通りあります。以下の通りです。
- 太陽光パネルを設置する架台を板金屋根に専用金具で止めて建物の屋根に穴を開けない方法
- 屋根に太陽光パネルの架台をビスで屋根の下地の木まで打ち込んで防水処理をする方法
この2択では、必ずビスで屋根に穴を開ける方法で施工してくれる業者さんを選んでください。
確かに、専用の金具で設置する方法は屋根に穴を開けずに工事ができ、建物に傷をつけなくていいと魅了を感じてしまいますが、ものすごく勢力の強い台風が来た際に、板金の屋根自体が吹き飛ばされてしまうと、太陽光パネルは板金屋根に固定されているだけで、屋根の下にある建物の構造躯体にしっかりと固定されていませんから、屋根の板金と一緒に太陽光パネルまで飛んでいってしまう可能性が大きくなってしまいます。
また、専用の金具止めの施工の場合、太陽光パネルに強い暴風に見舞われた際、強い力で屋根の金具部分を引っ張ってしまい、金具が取り付けられている屋根部分が緩んでしまい、雨漏りの原因になるという事例があります。
瑕疵保険期間内は建てた建築会社で載せるのがおすすめ
太陽光はよく訪問販売業者が販売にきます。
何だか思ったよりも安い!と、魅力的な金額の安売り提案に浮足立って、忘れられてしまうことが多いのが、新築時に掛けられている瑕疵保険の雨漏りにたいする保証が今後無効になってしまうことです。
新築したときから10年間は、建築会社が法律で決められた瑕疵保険という保険にすべての建物に加入させる義務があります。
この保険の落とし穴が、建てた建築会社以外の会社が太陽光パネルの設置工事をすると、瑕疵保険自体が切れてしまって、今後もしも雨漏り等の被害があっても、瑕疵保険が使用できなくなってしまうということです。
ここについて、以前、弊社のお客様がハマってしまった事例があります。
訪問販売業者の安い設置金額に加えて、「設置には自社保証があるから瑕疵保険切れても、もし雨漏りなどあったらその保証で修繕するので大丈夫です」という言葉を信じて載せてしまったら訪問販売業者がその地域から撤退してしまい音信不通。
雨漏りがあっても直してもらえず、実費で直すしかなかったという事がありました。
また、設置の際の「設置不良による雨漏り」はそもそも太陽光パネルメーカーの保証対象外となりますからここも要注意です。
このことから、本当に信頼できる設置工事会社にしか、太陽光パネルを依頼してはいけないという事を重要視していただきたいと思います。
例えば、私達ですと、私達に太陽光パネル設置のご依頼をいただきますと、工事全体を私達が請負い、発注や工事の施工状況など元請けとして工事管理をし、実際に設置するのは地元の建材業者さんとその職人さん達となります。
万一、設置工事に不備があっても、地に足着いた撤退をゆるされない私達が私たちの地元で仕事をしている設置業者の保証を元に、しっかりと対処することとなっています。
自社で整えている保証なんて、売る時に「保証がありまーす!」と言ったもの勝ちで、工事が終わった後は逃げてしまえー、なんてことが実際に横行してます。
これでは詐欺です。
でも、そういう被害が実際にある事を知っておいてください。
まとめ
太陽光パネルについて、仕組みや選ぶポイント、注意点などご理解いただけたでしょうか?
今回の内容をまとめますと・・・
- 太陽光パネルを載せるのは太陽光だけなら4~5kW、蓄電池もつけるなら+2~3kWくらい
- 太陽光パネルを載せる段階で、蓄電池や電気自動車に対応するパワコンを選ぶ
- パネルの保証はメーカー保証がついているのを確認し、取替え工事まで対応かも確認する
- 設置工事は絶対に信頼できる業者さんに取付けてもらって雨漏りの無いように対策をする
この4つのポイントに気を付けて考えてください。
太陽光パネルのご相談はこちらまでお問い合せください!
これから太陽光パネルの設置を検討されているという方は是非ご相談ください。
