前回は断熱を考える上で、一番に考えることとして「窓」についてお伝えさせていただきました。
今回も、7つのポイントの断熱について考えていこうと思います。
断熱を考えていく上で窓以外で、一般的に気にされているのが、
どの断熱材を使うことが1番いいのか?と言う問題です。
ついつい断熱材の種類によって良し悪しを考えてしまいがちですが、
実は断熱材の種類ばかりにとらわれていてはいけません。
もっとも使われているグラスウールです。安価なため、採用率が高いのですが正しく施工するにはかなりの手間を要します。
高性能な断熱材 ネオマフォームも有名ですが高価なためしっかりとした厚みを確保するのにかなりの費用を要します。
大切なのは断熱材の厚みです。
壁の中や、天井、屋根にどれだけの厚みで断熱材が施工されているか、それが大切なのです。
断熱材の厚みが少なければ、どれだけ高性能で良いと世間で言われている断熱材でも、
効果は薄くなってしまいます。
逆に世間でありふれているグラスウールと言う断熱材をしっかりとした厚みで正しく施行すれば、
薄っぺらい高性能断熱材よりも断熱性能を発揮してくれることもあります。
断熱材にかかわらず、すべてのものには、それぞれの材質に熱伝導率と言うものがあり、その熱伝導率の数値が大きいものは、熱を通しやすいので断熱材としては性能が低く、数値が小さいものは熱を通しにくので断熱材としては、高性能ということができます。
熱伝導率・・・1㎥の立方体の内外温度差が1℃の時に移動する熱量(数値が小さいほど性能が良い)
木や鉄、コンクリートなどの住宅の構造に使われるものにも熱伝導率というものがあり、木造住宅、鉄骨住宅、コンクリート住宅にも熱が通りやすいかどうかが決まっています。
その熱伝導率を表にしてみるとこのようになっています。
【物質の種類と熱伝導率】
物質の種類 | 熱伝導率 | グラスウール基準 |
ネオマフォーム | 0.020 | 0.53倍 |
硬質ウレタンフォーム | 0.024 | 0.63倍 |
スタイロフォーム | 0.028 | 0.74倍 |
アクアフォーム | 0.034 | 0.89倍 |
高性能グラスウール16K | 0.038 | 1倍 |
セルロースファイバー | 0.040 | 1.1倍 |
杉・桧 | 0.100 | 2.6倍 |
合板 | 0.130 | 3.4倍 |
ALC板 | 0.150 | 3.9倍 |
樹脂 | 0.200 | 5.3倍 |
石膏ボード | 0.210 | 5.5倍 |
ガラス | 0.780 | 20.5倍 |
土壁 | 0.900 | 23.7倍 |
コンクリート | 1.630 | 42.9倍 |
鉄 | 48.00 | 126.0倍 |
アルミニウム | 237.0 | 6236.8倍 |
この中で、最も断熱性能が高いと呼ばれるものが、フェノール系の断熱材で、
一般名称でネオマフォームと呼ばれているものです。
そこから硬質ウレタン断熱材、セルロースファイバー、グラスウールやロックウールと呼ばれるような
繊維系断熱材もあれば、吹き付けウレタン断熱材(アクアフォーム)などにおいては、
気密の確保も兼ね備えた断熱材もあり、様々な種類があります。
一般的に、熱伝導率が0.05以下のものを断熱材と呼んでよいのではないかと思います。
また断熱材ではありませんが、木や合板、鉄、コンクリート、ガラスやアルミも
熱の通しやすい通しにくいの比較が熱伝導率によってできるようになっています。
こやってみると、コンクリート、鉄、アルミニウムの3つは熱伝導率が高いですよね。
ということは、鉄骨の住宅やコンクリートづくりの住宅は、外気を室内に通しやすく、
室内の熱も外に通しやすいという事が言えるわけです。
昔、アルミサッシが大流行していましたが、アルミサッシの熱伝導率は他のものと比較をしても、
とてつもない熱伝導率だということで、なぜサッシが結露するのか?という問題は、
こういう熱伝導率を知ると物理的に理解をすることができます。
この熱伝導率に、厚みを考慮して計算すると、その住宅における断熱材の性能というのは決まってきます。
これを熱貫流率という単位で表します。
熱貫流率・・・1㎡で厚さ自由の直方体で内外温度差が1℃のとき移動する熱量(数値が小さいほど性能が良い)
これは簡単に言うと、どんな物質がどれくらいの厚みだったら、どれくらいの断熱性能があるか?
ということを表すものです。
例えば、最も高性能と呼ばれるフェノール系の断熱材ネオマフォームを、10cm壁の中に使ったとしましょう。
同じように高性能グラスウールを壁の中に10cm入れたと考えます。
すると、数値としてはこのように変わってきます。
ネオマフォーム断熱材を10㎝施工
0.02(W/mK)÷ 0.1(m)=0.2(W/㎡K)
グラスウール16Kを10㎝施工
0.038(W/mK)÷ 0.1(m)=0.38(W/㎡K)
こうやって比較すると、同じ厚みであれば、間違いなく熱伝導率の値が小さいフェノール系断熱材のネオマフォームの方が、
熱貫流率(断熱性能)が良いと言うことがわかります。
しかしフェノール系の断熱材というのは、性能がかなり高いだけあって用意するコストもかなりかかります。
フェノール系の断熱材は10㎝壁の中に入れている会社と言うのはあまり見受けられませんし、
10㎝以上入れている会社さんがあっても、そもそもの建物が超高額でなかなか購入しづらいのが現状です。
そういったことから、フェノール系の断熱材を使っている場合、
「弊社はネオマフォームを使っているから暖かいです!」と言っている会社がいても、5㎝やひどいところでは2〜3㎝位の厚みと言うところもあるようです。
いくら高性能な断熱材でも、たった2、3㎝でどれくらいの効果が発揮できるのでしょうか?
ここで比較をしてみましょう。
フェノール断熱材を3cm施工
0.02(W/mK)÷0.03(m)=0.67(W/㎡K)
フェノール断熱材を5cmも計算しておきましょう!
0.02(W/mK)÷0.05(m)=0.40(W/㎡K)
わかりますか?
グラスウール16Kを10cm使ったときは0.38でしたが、ネオマフォーム5cmだと0.40です。
ということは、グラスウールの10cmの方がネオマフォームを5cm使うよりも、
わずかですが断熱性能が高いということなのです。
これは、断熱の勉強をしっかりとしていない工務店の実務者も陥りがちなのですが、私達のところにもやってくる材料メーカーや問屋さんは、「ネオマフォームなので性能が高い家を建てれますよ。今なら〇〇円でご提供しますからどうですか?」という感じで売り込みにきます。
そうすると、私達の業界内でネオマフォーム=価格は高いけど性能も高いというイメージがあるので、
「ネオマフォームを標準仕様にしたら、お客さん来てくれるかもしれない!」なんてスケベ心が働いて、
ネオマフォームを使用してしまうんですよね。
その上で、少しでも安く仕入れができると感じたら、ますます工務店側が、ネオマフォームマジックにかかってしまって、本当にお客様にとってメリットのあるところから外れた視点になってしまうのです。これ、本当に要注意です。
それでは今回お伝えしたかったことをまとめていこうと思います。
①物質には熱伝導率あり、物質によって熱の伝わりやすさは違う
②断熱材は厚みによって、熱伝導率が良い断熱材でも熱貫流率(断熱性能)が良いとは限らない
では実際に、イトー工務店がどんな断熱材をエコ住宅として使用しているのか?
それについては、次回お伝えしていこうと思います。