エコ住宅に必要な7つのポイントも2つ目に入っていきます。
前回までで、高気密高断熱住宅(エコ住宅)に必要な7つのポイントのかなり比重の大きな断熱を考えるという部分をお伝えしてきました。
>>>エコ住宅に必要な7つのポイント #4 断熱を考えるpart3~断熱材編①〜
>>>エコ住宅に必要な7つのポイント #5 断熱を考えるpart4~断熱材編②〜
今回の気密を考えるという事も、本当に大切なポイントになります。それでは、本当に快適で光熱費が削減できる高気密高断熱住宅で気をつける7つのポイントの2つめ「気密」についてお伝えしていきましょう。
住宅は工事中につくっていくなかで、少しずつ隙間ができます。床と壁の隙間や、壁と天井の隙間、壁と窓の隙間など、いろいろなところで隙間が生じます。その隙間が少なければ少ないほど、家の密封度が高く、隙間から熱が逃げにくい気密性の高い住宅だといえます。
逆に、隙間が多ければ多いほど、その隙間から熱が逃げる可能性が高く、熱効率の悪い(エアコンの光熱費が余計にかかる)住宅になってしまいます。
この密封度を数値で示すために設けられたのが、気密を表す「隙間相当面積=C値」です。この隙間相当面積というのは、住宅の床面積に対して、家の中の隙間がどれくらいあるかの割合を数値化したもので、単位はcm2/m2です。
このC値は、建築中の気密施工が終わった状態で気密測定というのものを行って計測します。計測風景はこのような感じです。
この気密測定をせずに気密性能を表すことは絶対にできません。
中には、気密測定をしていないのに「当社の建物の気密性能は、C値1.0です。」といっている工務店やハウスメーカーがあるようですが、それは断熱材の推奨目安値であったり、データを取るためのモデルハウスで、計測をしたただけで、実際に現場で建てている建物では計測していないことが多いので、要注意です。
高気密高断熱の住宅を建てたいと思うなら、出会う工務店やハウスメーカーに「気密測定はしていますか?実測値を教えて下さい。」と言ってみましょう。
気密性能が良い家と、悪い家とでは一体なにが違うのでしょうか?
気密性能をお伝えする前に、まず、空気の性質からお伝えします。空気は暖かい空気は上にあがり、冷えた空気は下にさがる性質があります。もしも気密がとれていない住宅の場合だと、冬場、部屋の中で暖まった空気が天井の方へ上がっていき、天井と壁の隙間や、窓と壁の隙間から屋外に空気が出ていってしまいます。すると、空気は出ていった量と同じだけ、室内に取り込むという性質があるので、床と壁の隙間などから、天井から出ていった暖かい空気と同じ量の冷えた空気が隙間風となって室内に入ってきます。
すると、足元は冷えて頭の部分は暖かいという、健康には非常に良くない状態になってしまいます。健康に良いのは、東洋医学で昔から言われている頭寒足熱(頭を冷やして足元を暖める)ですので、気密性能が悪い住宅は、健康にダイレクトに悪い住宅だと言えてしまうわけです。温度計で室温は、ちょうど良い温度だったとしても、足元は数℃低い寒暖差が気密性能の悪い住宅のもっとも大きな特徴です。
反対に気密性能が高い住宅は、天井付近の温度と床の温度の温度差が縮まっていて、底冷えの無い住宅になるというわけです。気密性能が高い住宅というのは、エアコンなどの熱効率を良くするため、家計に優しい住宅であり、なおかつ人間の体の健康に即した健康住宅になります。
もう一つ、気密が悪い状態をつくってしまうのが、後々換気の部分でもお伝えしますが、室内の空気の鮮度に気密性能は影響してきます。
一般的に気密性能が悪い住宅の方が、気密性能の良い住宅よりも隙間風がたくさん入るから換気がよくおこなわれていると思われがちですが、実際は逆です。
気密性能が良いと、給気から排気までの経路をしっかり計画できるので、換気扇の排気性能を十分に発揮して、空気を計画的に新鮮に保つ事ができるのです。しかし、気密性能が悪いと空気の通り道を計画したとしても、うまく空気が通っていかず、換気扇近くの床や壁、天井の隙間から入ってきた空気が換気扇から排気されていくため、家の中央近くの部屋や、換気扇から遠い部屋は空気が上手に出入りせず濁った空気になってしまうわけです。
気密が良いというと、「高気密=息苦しい・換気が悪い」というイメージをもっていらっしゃる方をお見かけしますが、実際は逆で、気密性能が良い方が、換気効率がよく、家全体の空気が動くため、空気が新鮮で健康的だということを是非知っておいていただけたらと思います。
さて、その上で、いったいどれくらいの気密性能を高気密住宅を目指すなら確保すればいいのか、具体的なお話に入っていきたいと思います。現行の建築基準法では気密性能の基準は設けられていませんが、今までに日本で基準となっていた数値は、5.0以下を目安とされていたようです。これは、特に気密を考えずに現場の作業や、材料選びを考えて工事をしていく建築会社の数値の平均値と言われています。地場の工務店の平均性能であったり、分譲住宅がここにあたるようです。
これに対して、大手ハウスメーカー各社が「高気密高断熱住宅」と言いはじめたころからできた気密性能のC値の基準が2.0以下と設定されています。ただし、この数値は、計測用のモデルハウス等で計測した結果であり、各現場計測はしていないことが多いため、実際の計測値がいくつなのかまでは公表されていません。
ハウジングセンターなどに入っている全国区のハウスメーカーの中でも、高性能をうたい続けている一条工務店のC値は0.6以下とひときわ目を引きます。それに対して、その他の会社は一般的な2.0以下を目指しているようですし、そもそも気密測定をしていない会社さんが多いので、まだまだ日本の気密性能への興味は低く、断熱性能だけが先走ってしまっているのが伺えます。
イトー工務店のエコ住宅は、C値=0.5以下を基準としていてエコ住宅シリーズは全棟気密測定を実施しています。その計測結果の計測値平均は0.2以下となっていて、現場での施工の丁寧さがここでわかっていただけるのではないでしょうか?大手ハウスメーカーさんの高気密住宅がC値=2.0が基準だとすると、私たちのエコ住宅は超高気密住宅と読んでも過言ではないかもしれません。
C値=0.6までは、そこまでコストをかけずに到達できると言われている数値なのです。しかし、実際に「いい家を作りたい!」と熱意をもって現場に取り組んでくれている職人さんや現場監督の熱意もあって、イトー工務店では基準値を0.5以下に設定することができています。
今後、日本が高気密高断熱化がはかられていったとしたら、C値=0.6~1.0が一般的な基準値となってくるかもしれませんね。
地元の小さな工務店であっても、大手ハウスメーカーにまったく劣らない気密性能をつくり出すことが可能です。
いかがでしたでしょうか?断熱については、かなり世の中に考え方が広がってきていると思いますが、気密性能の方はというと、実際まだまだ広まっていませんし、息苦しいなどの間違った解釈がうまれてしまっているのも事実です。ですので、正しく気密について知っていただき家計にも健康にも良い、エコ住宅をかんがえていただけたら幸いです。
それでは今回のまとめです。
①気密性能はC値で表現する。
②気密性能が高いと家の中の空気がしっかり動き、新鮮な空気の循環を作ることができる
③気密性能は、国の目安は5.0以下、高気密高断熱住宅は2.0以下、イトー工務店は0.5以下