2023/01/13
家づくり情報
一種換気?三種換気?
こんにちは。イトー工務店 伊藤です。
今日は、ここ数か月で立て続けにご質問いただいたことについて書いていこうと思います。今回はめちゃめちゃ計算式が多いので、計算式が嫌いという方にとっては苦しい内容かもしれません(汗
目次
なんで一種換気じゃなく三種換気なの?
イトー工務店のエコ住宅は、基本的に三種換気を採用しています。
これに対して、Youtubeや他社さんのブログで調べられている方は違和感を感じられるということで、見学会やモデルハウスで、「なぜ高性能住宅なのに換気は一種換気をつかわないんですか?」というご質問をけっこうな頻度でいただきました。
ここで一種換気と三種換気の違いがあまりわかっていない方の為に、少し解説します。
一種換気・・・機械の力で空気を給気して、機械の力で排気する。
三種換気・・・自然給気口などで給気して、機械の力で排気する。
ざっと、こんな違いです。
これでいったい何が変わるのか?ということも説明します。
まず三種換気ですが、三種換気は換気扇から空気を排気することで換気を行います。この時、家を箱ととらえると、箱の中の空気は、出ていった量と同じだけ給気する作用があるので、換気扇で排気した量と同じだけの空気が自然給気口から入ってきます。
一種換気はというと、給気も機械、排気も機械ですから、機械の給気量、排気量をイコールにして、給排気を行っています。
この時、一種換気だと、給気時に「熱交換」といって、そとから入ってくる空気の温度と、室内で排気する空気の温度を混ぜ混ぜにして、冬なら寒い空気を少し暖め、夏なら熱い空気を少し冷やして、室内の暑い寒いを減らす事を行っています。(温度だけを混ぜ混ぜにするだけなので、空気の汚れなどはまざりません)
この熱交換をするときに、換気の器具によって「熱交換率」というのが性能として記載があります。だいたい80%前後の熱交換率をもっているものが多いです。(実際には車の燃費と同じように、設定されたパーセントの7割くらいの効果だと言われています)
三種換気と一種換気で起きる電気代の変化
ここからは、私の師匠でもある兵庫県明石市の松尾和也先生のYoutubeを参考に考えていこうと思います。
松尾先生の一種換気と三種換気の比較のYoutubeはこちらです。
ここで私の師匠が詳しく解説をしていますので、ご覧いただくのが一番なのですが、ブログの中でも「この西三河だったら?」という視点で解説を加えていこうと思います。
まず、幅6メートル、奥行き10メートル、高さ5メートルの2階建ての建物があるとします。この建物は、床面積120㎡、容積は300㎡です。
24時間換気法という法律というものがあり、2時間で建物の空気をまるっと入れ替えるという決まりとなっていますので、1時間で行われる換気は建物の容積300㎥の半分の150㎥/hとなります。1時間で150㎥を換気しなければならないという計算です。
さて、次にこの西三河地域の気象庁のデータを拾っておきます。岡崎市のデータがおそらく一番近いのではないかと思うので、岡崎市のデータで数字を拾っていくと・・・
2022年の冬の1月、2月、3月、11月、12月の5ヵ月の平均外気温が7.14℃
2022年の夏の7月、8月、9月の3ヵ月の平均外気温が26.5℃
という温度となります。室内の目標温度を冬が21℃、夏が24℃としましょう。
それぞれ、外気温と目標室内温度の差は、冬が13.86℃、夏が2.5℃となります。
中部電力のホームページから電気代を
次に、計算式に使う中部電力の電気料金を拾っておきましょう。
この時、電気料金だけ拾ってはいけません。近年の電気代の高騰の主犯といえばコレ!再エネ賦課金です。この再エネ賦課金も使用した電気量に対してかかってきますから、両方を足した金額を電気料金単価とするのが良いでしょう。
すると、28.46円+3.45円=31.91円/kWh となります。高っ!!って感じです。
いよいよ換気による光熱費差額の計算です
今回参考にしている120㎡の建物で計算していきます。一種換気の熱交換率は80%としましょう。
①冬の換気による対流熱の光熱費
三種換気:0.35W/㎥×150㎥/h×13.86℃=727W
一種換気:0.35W/㎥×150㎥/h×13.86℃×(100%-80%)=145W
727W(三種)-145W(一種)=582W
三種換気よりも一種換気の方が1時間あたり 582Wh お得になります。
これを冬の日数分150日で計算しますと、582Wh×24H×150日=2095kWhとなります。
冬場を通じて 2095kWh も違うと思うと、かなりの差ですね!
これを実際に電気料金に直していくのですが、エアコンの実行効率(COP)というのを加味して計算していきますので、ここは見ていていただきたいところですが、計算式としてはこうなります。
2095kWh÷3(エアコンCOP)×31.91円(電気単価)=22,284円・・・一種換気にすることで得する電気代となります。
②夏の換気による対流熱の光熱費
三種換気:0.35W/㎥×150㎥/h×2.5℃=131W
一種換気:0.35W/㎥×150㎥/h×2.5℃×(100%-80%)=26W
131W(三種)-26W(一種)=105W
三種換気よりも一種換気の方が1時間あたり 105W お得になります。
これを冬の日数分90日で計算しますと、105W×24H×90日=226kWhとなります。
夏のお得感としては 226kWh となり、冬場に比べると、そこまで差が出ないなぁと個人的に思ってしまいます。
これを冬場の時と同じように実際に電気料金に直していきます。夏場のエアコンの実行効率(COP)は暖房よりも良いので、「5」で計算式していきます。
226kWh÷5(エアコンCOP)×31.91円(電気単価)=1,442円・・・一種換気にすることで得する電気代となります。
冬場の22,284円と、夏場の1,442円を足して、23,726円が夏冬合わせた一種換気にした時の得する電気代となります。
ここまでだと、一種換気を採用することで一年で23,726円お得になるんだという事になるのですが、実際はもう少し少なくなります。次はその計算をしていこうと思います。
一種換気を動かすのににかかる費用は?
一種換気は三種換気よりも、動かすための電気代がかかります。(こまかーい話しですが…)
一種換気は動かすのにだいたい30W~40W程度かかりますから、ここでは中間をとって35Wとします。
三種換気は換気扇を3台程度動かすだけで、1台あたり1Wと言われていますので、3Wくらいでしょう。
一種換気の運転する電気量と、三種の運転する電気量とをの差は32Wです。
先ほど計算した夏90日、冬150日の合計240日動かしたとすると・・・
32W×24H×240日=184kWとなります。
これを電気代に換算すると、184kWh×31.91円=5,871円 となり、三種換気よりも一種換気の方が動かすだけで5,871円電気代を使うということが見えます。
一種換気の実質のお得金額は?
一種換気を実際に運転して、熱交換をすることで得られるメリットというのは・・・
夏と冬の熱交換で一種換気が得られる効果・・・23,726円
一種と三種で一種換気の方が多く運転にかかってしまう効果・・・-5,871円
結果として、 23,726円-5,871円=17,855円 が、一種換気と三種換気で比較したときに得られる夏季・冬季の光熱費の差となります。
さて、では一種換気が年間17,855円光熱費が抑えられるということであれば、一種換気一択なのか?というと、私はそうではないかなぁと感じている部分があります。
それは、この計算の中には導入設置費と、後々のメンテナンス費が含まれていないからです。一種換気は、導入設置するのにざっと30万円~40万円ほどかかってきます。そして、一種換気はダクト有の一種換気とダクト無しの一種換気とがありますが、どちらもなかなか高額な機械ですので、10年から15年くらいを目安にモーターなどの取替えなどなど、メンテナンスにもかなり金額を要します。(ダクト有りの一種換気は特にメンテナンスには注意を払わなければなりません)
ざっと、10年で換気システムの交換などで、材工80,000円程のメンテナンス費がかかったと仮定しましょう。そうすると、40年で320,000円(80,000円×4回)、導入費で400,000円で、720,000円が器具の設置・メンテナンス費となります。
これを先ほど計算で算出した1年間でお得になる17,855円で割ってみましょう。
720,000円÷17,855円/年=40.3年
ざっと第一種換気システムの導入設置・メンテナンス費を回収するのに40年以上かかってくる計算になります。
ちなみに50年分のメンテナンス費を入れて計算するといよいよ・・・、
800,000円÷17,855円/年=44.8年
となりまして、ようやく50年を目安として考えると回収ができるというわけです。
ただ、私たちが心配しているのは、モーターなどの交換で済むようなメンテナンスであれば良いですが、長い間使用していれば、器具を丸ごと交換しなければならないという事も容易に想像ができます。そうなってくると、50年でかけた費用が回収できるかどうかも不明ということがわかるかと思います。
また、かなり上の方で書きましたが、熱交換率も今回は80%と設定して計算をしましたが、実際は7割くらいの効果しか発揮しないであろうということから、80%の熱交換率であれば56%くらいしか実際の効果は得られないくらいに思っておかなければならないと考えています。
とするならば、私たちイトー工務店としては、例えば子育て世代のご家族でご主人様が30歳の方が家づくりをする際に、お子さんの学費などの捻出もしなければならない、車の買い替えもしなければならないという時に、換気器具のメンテナンス費用で何万円という費用を定期的に出さなければならないというよりは、1年間で17,855円の光熱費はかかってしまいますが、後々のメンテナンスが楽な事など考えると三種換気でも良いのではないだろうか?と思っています。
回収年数が30年以内であれば、私たちも効果がかなり期待できると考えていますが、30年以上であれば私たちからあえて熱烈におススメする事ではないと考えます。ただし、だからといって取り扱いをしないという事ではなく、一種換気の何かが絶対的にお客様ご家族の家づくりに必要な事だということであれば、ダクト有り無しに関わらず設置をいたします。
大切なのは、メリットデメリットを浅いところで考えるのではなく、今回のような比較を細かくしてみた上で付ける付けないの判断をすることが大事ではないでしょうか?
ちなみに、私のお友達の工務店が山梨県にありますが、山梨県のお友達の工務店さんの地域で計測したら、一種換気をつけた時の回収年数が30年を切っており、かなり良い効果が期待できるということがわかっています。
家づくりをする際には、私たちが住んでいるこの西三河地域の温暖な気候に合わせた設備選択が必要であると私は考えています。だからこそ、イトー工務店は世間での流行りに迷うことなく、地域密着で地域に住む方々にもっとも効果的な住宅をご提供していかなければならないのです。
今回は長々と書かせていただきましたが、最後までお読みいただいた方、本当にありがとうございます。
さて、イトー工務店では、今月末も西尾市米野町で完成見学会を行います。断熱気密性能を高めた住宅となっていますので、是非ご覧いただければ幸いです!
見学会の情報は下の画像からお進みください。