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ARTICLE家づくりのお役立ち記事

どっちを選べばいいの?一種換気?三種換気?

家づくりエコ住宅

どっちを選べばいいの?一種換気?三種換気?

換気の種類には、一種換気と三種換気が主に一戸建て住宅では使われます。

一種換気と三種換気、この私たちが住む西三河ではどちらを選んだらいいのか?

今回は、それをテーマにお伝えしていきます。

第一種換気と第三種換気

第一種換気という換気方法は、家の外から空気を入れる方法(給気)と、家の中の空気を外に排出する方法(排気)の両方を機械を使って行う方法を言います。

給気、排気の両方ともに換気扇がついているといったようなイメージをもってください。

【一種換気で給気と排気を行うメリット】

  1. 室内の空気の循環効率をあげることができる
  2. 室内の冷暖房効率をあげることができる

この2点があげられます。理由や説明は後ほど…

次に第三種換気という換気方法は、家の外から空気を入れる方法(給気)を自然給気口という、給気の為の穴にフィルターとカバーをつけたものを使用し、家の中の空気を外に排出する方法(排気)には、機械の換気扇を使用するという方法を言います。

空気の入口は給気の為の穴、排気は換気扇をつかうというイメージを持ってください。もちろん給気口といっても、単に穴がポッカリ開いて丸見えではありませんのでご安心を。

【三種換気で空気の給排気を行うメリット】

  1. 設置コストが圧倒的に安い
  2. 取替えやメンテナンスが楽にできる

この2点があげられます。

空気の循環効率

ここで、まず一種換気のメリットにあげた「空気の循環効率」という点についてふれていきます。

空気というものの前提として、空気は同じ量を排出したら、まったく同じ量の空気を取り込むという性質があります。その性質から、給気も排気も機械で同じ量の給排気を行うえば、必ず給気口から必要な空気量が入ってきて、ぐるっと家の中を循環して排気口から入ってきた量と同じだけの空気が出ていくという事が言えます。

これについて、当然の事では?と思った方もいるかもしれませんが、住宅においてはその当たり前が当たり前ではないことがあります。それは、家の気密性能(C値)が低い場合です。

家の気密性能(C値)が悪いと、三種換気のような排気だけ機械を使っておこなおうとすると、換気扇から出ていく排気量が一定であっても、給気口から入ってくる空気の量は必ずしも一定というわけではありません。家の所々にある小さな隙間から、空気が外から漏れるように入ってくるという現象が起きます。

すると、本当に入ってきてほしい計画された場所からの給気量が少なくなるため、空気の流れが悪く、効率よく空気が移動してくれません。それによって、滞った空気の影響で部屋の臭いがとれないなどの現象がおきます。よく、昔、友人の家に行くと、その家独特の臭いを感じたという経験をお持ちの方や、ペットを飼っているお宅にお邪魔したときの臭いなどを感じた経験をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、その感じに近いです。

 

しかし、一種換気の方法で、空気を排気されるのと同じ量だけ給気の換気扇から入ってくるとしたら、空気はしっかりと循環してくれますから、気密性能がある程度悪くても家の空気の循環効率はあげてくれます。

このように、一種換気は、気密性能の悪い住宅に大きな効果が発揮されます。

ただし、気密性能を表すC値が1.0以下の場合は、三種換気でも一種換気同等の空気の循環効率をもつと考えてよいと思います。気密性能が良い住宅であれば、小さな隙間がほとんどありませんから、排気をする換気扇から出ていった量とまったく同じ量の空気を、ファンのついていない自然給気口から入れることができます。

このことから、空気の循環効率を考えて一種換気にするか、三種換気にするかを考えている方は、気密性能の良し悪しによってどちらにしようかを選択することをおススメします。

冷暖房効率

次に冷暖房効率についてお伝えしていこうと思います。一種換気にも様々なメーカー、様々な機種があります。一種換気では、かなり多くの機種に熱交換器と言うものが備わっています。

熱交換機とは、その名前の通り熱交換を行うものの事をいいますが、そもそも熱交換という言葉がよくわからないという方の為に補足します。熱交換とは、例えば冬場、家の中の暖かい空気を換気扇で外に出す時、この室内で暖まった空気の熱がそのまま排気されるとなんだかもったいない感じがします。

また同じく冬場、外から空気を入れようとするときに、外でキンキンに冷えた空気が家の中にダイレクトに入ってきたら暖まっている部屋の温度は自然に下がっていってしまい、こちらももったいないことが起こります。

そういったとき、給気する空気と、排気する空気を温度だけ混ぜ合わせて、排気する暖まった温度で給気する冷えた温度を暖めてぬるくしてから家の中に給気するという作用をすることを「熱交換」と言います。

すると、キンキンに冷えた空気が入ってくるのに比べて、冷暖房効率は上がり冷暖房の光熱費が三種換気に比べて安くなりますし、室内に冷えを感じることが少なくなります。

一種換気と三種換気の設計コスト

では次に一種換気と三種換気の設置コストについて考えていきたいと思います。

まず一種換気ですが、設置コストを考えるときに大きく2つの種類があることを覚えておいてください。1つは家の天井裏や床下などに熱交換の機材を設置して、そこから天井裏や壁にダクトを配管し、各部屋に給気や排気を行うという「ダクト式」という方法です。この種類の換気方法は、機材も高ければ設置するのに機械の設置とダクト配管など、かなり器具にも設置作業費にもお金がかかります。ざっと、約50万円~70万円前後の金額がかかってくると思います。

もう一つの種類が、壁に換気扇のような換気の部材をいくつか設置して、その機械の中にファンと熱交換の為のセラミックが入っていて、約70秒に一回、給気と排気を入れ替えて動作する「ダクトレス式」というものがあります。こちらは、ダクト配管式に比べると少しコストが下がりますが、それでも約30万円~40万円前後します。

ダクト式の一種換気の機材です。

ダクトの無い(ダクトレス)換気の機材です。

三種換気は家の中の各居室に自然吸気口と呼ばれる吸気の部材を取り付け、トイレやお風呂、または階段などに24時間換気の法律に適合した換気扇を設置します。この時、空気の給気や排気の量と言うのは法律に定められた所定の計算方法にて算出をしていきます。設置コストはだいたい5万円以下くらいで設置が可能です。


三種換気に使う部材です。給気口カバーとよく目にする換気扇です。

一種換気、三種換気どちらを採用すればいいの?

ここからは、一種換気と三種換気のどちらを採用すれば良いのかということについてお伝えしていきます。

よく大手ハウスメーカーをはじめ、高額商品を売りたい建築会社は一種換気の快適さと光熱費の削減を勧めてきます。確かに空気の循環も良いでしょうし、熱交換機の作用により室内が快適で、冷暖房費も下がります。

しかし換気の部材と言うのはすべて機械でできています。どうしても10年から15年に1回は、メンテナンスを行って器具の取り替えをおこなったり、ダクトの清掃などを行わなければなりません。また、一種換気のダクトがあるものについては、15年に1階のメンテナンスのみならず頻繁にフィルターの清掃やメンテナンスを行っていかなければ、空気の流れが止まります。

いったいどちらがいいのだろうか?という問題が常についてきます。

①メンテナンスコストは考えず快適さのみを追求

まず、大前提として、メンテナンスコストは一切考えず、快適なものがいい!という方は問答無用で一種換気を選択してください。その時、もしもダクトやフィルターのこまめな清掃が苦手だという方は、絶対にダクト有の一種換気を選ばないことです。

ハウスメーカーさんは、一種換気のダクトの清掃は一切必要ないといいますが、そんなことはありません。長い年月のうちにかなり汚れます。ですから、掃除やメンテナンスの自分で手を加える手間が面倒という方は、一種換気の中でもダクトレス方式と呼ばれる壁に取り付けるものをご選択することをおススメします。

メンテナンスコストは考えなくても、メンテナンスや清掃を加えなければ機械が詰まったり壊れてしまったりしますので、必ずメンテナンスは行って下さいね。

また、気密性能が良くない住宅も、光熱費計算を度外視して一種換気が良いと考えます。先にもお伝えしましたが、気密性能が悪い住宅を建てると、いくら申請上は計画的に換気の計算がされていても、細かい隙間から空気が入ってきてしまったり、出て行ってしまったりするので、実際に計画的に換気を行っているのか怪しいものです。ほぼうまく動いていないといってよいでしょう。

もしも今後建てるのを依頼する建築会社さんが、気密性能を重視していないようでしたら、一種換気を入れてくださいと伝えることをおススメします。一種換気であれば、機械の力で給気口から必要な換気量、排気口から必要な排気量が出ていきます。

ただ、実際に建築会社さんの中には、気密性能が良い=息苦しい、と勘違いされている方が意外といらっしゃいます。しかし、完全に密閉された空間ならまだしも、2時間で家の中の空気がまるごと入れ替わるくらいの空気の循環があるのに息苦しいということはありません。

逆に、気密性能を高めたくても職人さんの技術の問題で高い気密性能値(C値)が出せない会社さんの言い訳に「息苦しい」という言葉を用いられることもありますから注意が必要ですね。ちなみにイトー工務店のC値の実測値平均は0.2です。

②一種換気と三種換気のトータルコストの差

次に、一種換気と三種換気のトータルコストの差です。ここからは、換気や冷暖房にかかるコストを計算していきます。ちょっとマニアックな計算なので、わからない場合は下の計算結果まで読み飛ばしてください。

空気が運ぶ熱量の係数は0.35W/㎡K(これは空気が運べる熱量の決まった係数となります)

一般的な住宅で必要な換気流量を150㎥/hとします。

西三河の冬場を11月から3月までの5か月間として平均気温を気象庁のHPで調べてきまして、6.9K(℃)でした。

夏場は、7月から8月までの3か月間として、平均気温は25.6K(℃)でした。

意外と低いように感じるかもしれませんが、朝晩の気温まで入れて平均をとるとこの温度となります。

室内の温度は常に冬場20℃、夏場を24℃に保つという条件とします。

※夏場24℃というのは若干低すぎるかもしれませんが、夏場の平均気温の低さからシミュレーション上この温度を使用いたします。

では、ここから、計算をしていきます。

 

【冬場の計算】

①三種換気で抜ける対流熱

0.35W/㎡K×150㎥/h×(20℃-6.9℃)=687.75W/h(三種換気の熱損失量)


②一種換気で抜ける対流熱

0.35W/㎡K×150㎥/h×(20℃-6.9℃)=687.75W/h

熱交換率80%で熱損失を防げる熱量が、

687.75W×(100%-80%)=137.55W/h(一種換気の熱損失量)

③三種換気と一種換気の差

687.75W-137.5W=550.2W/h

④三種と一種の差を冬場の期間で計算

1時間あたり550.2Wなので、1日にすると…

550.2W/h×24H=13204.8W

冬場の150日分の計算をすると

132048W×150日=1,980,720W

1,980kWhの差が1年間でうまれます。

次に夏場の計算をしていきましょう。

【夏場の計算】

①三種換気で入ってくる対流熱

0.35W/㎡K×150㎥/h×(25.6℃-24℃)=84W/h

②一種換気で入ってくる対流熱

0.35W/㎡K×150㎥/h×(25.6℃-24℃)=84W/h

熱交換率80%で計算をすると…

84W/h×(100%-80%)=16.8W/h

③三種換気と一種換気の差

84W/h-16.8W/h=67.2W/h

④三種と一種を夏場の期間で計算すると…

67.2W/h×24H=1612.8W

夏場の90日間で計算すると…

1612.8W×90=145,152W

145.152kWの差が1年間にうまれます。

電気代にすると?

【電気代に換算】

熱量がでてきましたので、ここから光熱費に置き換えて計算をしていきます。

冬場の損失熱量が1980.72kWでしたので、その熱量にエアコンのCOP(実行効率)をかけて出てきた数値に電気代28円をかけてみます。エアコンのCOP(実行効率)は3で計算していこうとおもいます。

1980.72kW÷3(エアコンCOP)×28円=18,486円

夏場の流入熱量が145.152kWでしたので、その熱量に夏場のエアコンのCOP(夏場は4で計算)をかけて出てきた数値に電気代28円をかけてみます。

145.152kW÷4(エアコンCOP)×28円=1,016円

18,486円(冬)+1,016円(夏)=19,502円

年間19,502円が一種換気で得する電気代となります。

まぁまぁな数字になったなぁと思いますが、そもそも夏場のエアコンを常に24℃というありえない環境下で計算しているのでちょっと無理があったかもしれません。

実際に、夏場常に26℃くらいを目指すとするならば、実は夏の電気代の差額はほぼ0円に等しくなります。

しかし、お話しはまだ終わりではありません。年間19,502円が純粋に得する電気代ではありますが、一種換気も三種換気も電気の力で動いていますから、その計算も加えていこうと思います。

換気器具の稼働する電気代を計算

【一種の使用電気量】

ここでは、壁に付ける一種換気を6台設置して1台あたりが2.1Wなので、

2.1W×6台×24H=302.4W

が一種換気でかかる1日の使用量です。

では、三種換気については、換気扇の消費電力1.5W前後で1棟に2台~3台ですので、ここでは3台で計算します。

1.5W×3台×24H=108W 

が三種換気でかかる1日の使用量です。

【三種と一種の使用量差額】

302.4W-108W=194.4W が一種換気で多くかかる1日の使用量です。

これを365日常に稼働させるので…

194.4W×365日=70,956W

三種換気と一種換気の年間の使用量の差が70.96kWとなります。

電気代に換算すると…

70.96kW×28円=1987円となります。

一種換気は1年間の光熱費で得した分が、19,502円ありましたが、

使用量に関しては1,987円のマイナスでしたので、

19,502円-1,987円=17,515円

となり、実質1年間に17,515円が得になるということになります。

メンテナンスコストを計算

さて、年間17,515円の得がでましたが、15年に1回のメンテナンスで、元がとれるかどうかまで考えてみましょう。

一種換気でダクトレス方式のものですと、だいたい35万円くらいをメンテナンスコストとして見ておきたいと思います。

350,000円(メンテ費)÷17,515円(得)=19.98年

実際に、一種換気で得した電気代を貯金していったとしても、15年でメンテナンス代が払えるまでには至らないという驚くべき結果がでました。

快適を求めるなら〇、得を求めるなら×!

今回の事から、一種換気を選ぶ基準というものが見えてきたのではないでしょうか。

もしも、「高い熱交換率で冷暖房費を削減して得ができる!」と考えるのであれば、実はそれは目先の得をとっているだけで、実際にはメンテナンス時には損をするということになります。

では、一種換気の方法が悪いものなのか?と言われればそうでもありません。

高いフィルタリング機能をもっていて、PM2.5を除去するフィルターをもっているものや、冷っとする空気を流入させないという利点はありますから、選ぶ価値はあると思います。

ただ、この温暖な6地域と呼ばれる愛知県(西三河地域)では、コストメリットとして第一種換気を選ぶのはおススメはしません

少し余談ですが、お友達の工務店が山梨県にあって、山梨県の平均気温で今回と同じような計算をしてみました。他にも仙台など東北の寒い地域でもシミュレーションしてみましたが温熱区分の3地域、4地域、5地域では光熱費削減のメリットが出ていました。やはり、温暖な6地域と寒い地域とは違うという事を実感します。

さて、これから家づくりをされるにあたって、一種換気を選ぶのであれば、得を選ぶのではなく、少しでも快適な環境をお金を払ってでもほしい!と思って選んでください。決して目先の損得に振り回されないようにハウスメーカーさんの営業さんのトークなどに注意しましょう。

住宅の性能について正しく理解したい方はこちら

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